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「持ち直したみたい。
まだ安心はできないけど…でも目は覚めたから…」

「よかったな。本当によかった…！」



思わず矢吹と抱き合うと、矢吹はやっとちゃんとした笑顔を見せた。



「ごめんね。付き合わせちゃって…今日仕事だったのに…」

「いいよ。今からでも十分できるから。」

「あと、波留くん…」



矢吹はそう言って一旦言葉を区切った。
その瞳は何か迷っているようだった。



「どうした？」

「あ…いや、ううん。
一緒にいてくれて、本当に助かった。本当に心強かった…」

「…あんまり力にもなれなかったけどな」


ずっと横に座っていただけだ。
気の利いた言葉もかけてあげられなかった。


だけど、矢吹はその言葉にブンブンと横に首を振った。




「…ありがとう…
あと…あの…謝っておいてもらえるかな…。」

「え…誰に…？」

「僕、相当嫌われちゃったみたいだから…会いに行くの良くないと思うし…」



苦笑いする彼に、木更津のことだとわかった。

木更津に何を言ったかはわからないけど、木更津が帰ってきたら、伝えて、仲直りしよう。


「ありがとな。」



矢吹の顔色は随分良くなっていた。
本当に意識が戻って良かった。



木更津はきっと明日戻ってくる。


矢吹が俺に好意を寄せていたことも、それを木更津が知っていたこともわかった。

だから、敵対視していたことも。


やっとわかったし、矢吹のお母さんも意識が戻ったし。
どんよりとしていた心は晴れやかになって、気分がよかった。


眠気なんて、あっという間に吹き飛んで、会社に向かった。