
エスキス アムール
第54章 仲直りしよう
大事な母親のそばから離れることを、許してはくれなかった。
波留くんに駅前であって、本当に良かったと思う。
母親が起きるまで待っている間、握ってくれた彼の手は本当に温かかった。
心まで温かくなる気がした。
彼を好きだと思った。
…心の底から。
好きだという思いが、大きくなった。
けれど彼はそんな僕をいつだって見ていない。
僕を通して、いつだって光平くんを見ている。
僕が憔悴してる時も、彼はず左手首につけている時計を見つめていた。
もしかしたら、僕のせいで光平くんとひと悶着あったのかもしれない。
ふたりの仲が悪くなればいいと思ってした行動は、波留くんにも嫌な思いをさせてしまっているに違いない。
波留くんは、こうして弱っている僕の隣にいてくれているのに。
こうしている間もきっと光平くんの事を想っているのだろう。
それほどまでに彼のことが好きなのなら、引き離して傷つくのは光平くんだけじゃなく、波留くんも傷つくのだということに今更ながら、気がついた。
