
エスキス アムール
第56章 彼の大事なもの
光平くんはまるで気がついていないみたいだけど、
僕はセミナーが一緒の頃から光平くんに立ち振る舞いや仕草や声がそっくりだと周りに言われてきた。
光平くんが僕に似ているのではなく、僕が光平くんに似ている。
いつもそう言われて、気に食わなかった。
だから、彼にはあまり良いようには当たらなかったと思う。
そんなことを知らない彼は、僕をただ変に絡んでくる胡散臭い奴だとしか思っていなかっただろう。
僕は彼をライバル視していたのに、彼は僕のことは全く意に介さずだった。
最初は、光平くんと波留くんが付き合っていると気がついて、そのタイミングで要くんにも会って。
彼のデザインが気に入ったし、彼もなかなかタイプだったから提携を進めた。
光平くんから、大切なものを奪えればいいやと思って彼にちょっかいを出したけど。
僕はいつの間にか、彼に本気になっていた。
