テキストサイズ

エスキス アムール

第58章 邪魔






言ったよね。
手放すつもりはないって。


嫌がったって、波留くんは僕のそばに置いておく。


他の奴のところに行くなんて、許さない。




絶対に取り戻してみせる。




「大野さーん…!」



しばらく歩いていると、すぐそばで聞き覚えのある声が聞こえた。

この声は確か…高峰くんだ。



高峰くんが呼んでるってことは…




「波留くん」

そうだ。
波留くんだ。



急いで、その声の所在を確かめる。
たどっていった、その先には二ヶ月ぶりに見る、波留くんの姿があった。



「おー、おはよ…」


その姿は眠そうで、どことなく暗い。
元気がないという言葉がぴったりだった。


急いで彼のもとに向かう。


あと少し

あと少しだ。



「また、元気ないっすねー
最近どうしたんですか?」

「別に…なんでもねー…よ……、!!」



僕が息を切らして、彼の前に現れると、波留くんは驚いた顔をして、一瞬固まった。



口元を震わして、今にも泣きそうな表情だ。

思わず抱きしめたくなる。


「あー!木更さん!お久しぶりですねー!」



高峰くんが明るく紡ぐ言葉も耳に入らない。
時間が止まったみたいだった。


―――――――けれど、
その時間を進めたのは、波留くんで。




「………え、あれ?!いいんすか?大野さん!」



波留くんは顔を歪めて、僕から視線を外すと、横をすり抜けて、行ってしまった。




――――――なに、あれ














ストーリーメニュー

TOPTOPへ