
エスキス アムール
第58章 邪魔
気持ちを抑えられなくなって、波留くんの会社ののそばまで行ってい見た。
家には帰ってこなくても、会社には行っているはずだ。
波留くんを信じている。
でも、連絡のひとつくらいいれたっていい。
携帯だって持って行っているし、一度くらい帰ってくることくらい可能なはずだ。
それを、どうして連絡もしてこない?
連絡しなくても平気だっていうのか。
あの喧嘩で、そんなにも僕たちの距離は離れてしまったのか。
矢吹に波留くんの得意料理を教えたのは、彼の気持ちを確かめるためだった。
波留くんが出て行く直前、僕はオムライスを彼にリクエストした。
矢吹からの連絡が入ってこなければ、オムライスを食べている予定だったのだ。
もし、矢吹がオムライスをリクエストして、あの時のことを覚えていれば、波留くんは何らかの反応を示すはずだろう。
僕はその場にいないから、直ぐに知ることはできないけれど、あんなに嫉妬深い矢吹のことだったらその異変に気がついて、何らかのアクションを起こすだろうと思ったのだ。
それは、僕の最後の頼りない賭けだった。
