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エスキス アムール

第60章 全てを捨てたって

【矢吹side】






「波留くんに何を言ったんだよ!」

「……静かにしてくれるかな。」



僕はまた光平くんに会いにきていた。
一度は帰ってくれと、拒否されそうになったけど家に無理矢理押しかけた。


光平くんは仕事をしていたようで、その続きをしていたけど、僕があとを付きまとって騒ぐものだから非常に迷惑そうな顔をした。


だけど、今僕はそんなことはどうでも良い。
今、波留くんのテンションをどうにかしようと必死なのだ。


あれから波留くんは自分のからに閉じ籠るようになってしまった。
それは僕のせいもあるかもしれないけど、多くの原因は光平くんと何かあったと思われる出来事だと思われる。




「もうそろそろ、家を出てくよ」


何があったのか教えてくれないまま、今日の朝、波留くんは僕にそう告げた。

僕も結構立ち直ったし、普通だったらそろそろ出て行ってもおかしくない。


けれど、帰る場所はあるのかと聞くと、マンション借りるからと言うばかりで、他のことは何も教えてくれない。


波留くんが出ていくなんて嫌だからとりあえず引き止めたのだけど、光平くんに波留くんが何を言われたのかも分からないから、原因を突き止めようと光平くんのところまでやってきたのだ。


だけど、彼も何度聞いても何も教えてくれない。




「…いつまでいるつもりなの?
もしかして、僕のことが好きなの?」


「好きなわけ無いだろ!
さっきから質問してるじゃないか!」


おまけに僕をからかって来る。
完全に僕は劣勢だ。

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