
エスキス アムール
第60章 全てを捨てたって
だったら。
こちらにも手がある。
「この間、波留くんを犯したんだ」
その一言で様子を見ると、光平くんは見ていた資料から視線をそらし、僕の方を見た。
「ちょっとした躾にね。
最初は痛がっていたけど、最後の方は随分気持ち良さそうに可愛い声出してたよ」
「……、本気でいってるの?」
僕が笑いながらそういうと、ようやく光平くんはこちらに反応して言葉を紡いだ。
「……本気だったらどうする?」
「別に。殺すだけだけど。」
「わー、怖いなあ」
その表情から、嘘には思えなかった。
ひと度頷けば、キッチンから包丁でも取り出しそうな顔だ。
「……波留くんのこと、傷つけたら許さない」
一瞬、ヒヤッとしてしまうほど、光平くんは低くて恐ろしい声色で僕にそう告げた。
