
エスキス アムール
第60章 全てを捨てたって
何が気に入らないって…
僕は……
「セミナーが一緒の時、僕たちはあまり話さなかったけど、矢吹がちょくちょくちょっかいを出してきているのはわかってた。」
「……」
「特に関わりもなかったしね。
気のせいかなとは思ったんだけど。」
淡々と話す光平くんに、緊張で心臓がなぜかドキドキしていた。
手に汗もかいてきてギュッと握り締める。
「斎藤くん」
「え…?」
「はは、わかりやすいね。」
ここでまさか出るとも思っていなかった名前が光平くんの口から出てきて、思わず過剰に反応してしまった。
「…僕が知らないとでも思った?」
「…っ」
微笑む光平くんはとても恐ろしかった。
