
エスキス アムール
第60章 全てを捨てたって
「…僕は思うんだけどね。
キミは、僕に憧れているんだよね、きっと」
「……なっ、自分で何言って…っ」
「言わせているのは矢吹だろ?
僕だって自分でこんなこと、言いたくないよ。」
光平くんは口を尖らせて、むっとしながらそういった。
初めて見る表情に、ドキリとする。
「でもね、考えてみたんだよ。じっくりと。」
「……?」
「ディべートで妙に突っかかってきたり、消しゴムのカス投げてくるとかさ、小学生レベルのちょっかいの出し方といい、考えてみたらさ、矢吹って、僕のこと気になってたんだろうなって。」
消しゴムのカス投げてたこと覚えてたんだ。
いつも、流されるみたいに微笑まれておしまいだったから、覚えてなんかいないと思っていた。
妙に変な、
なんていうか温かいようなものが心に流れ込んでくる。
「矢吹はきっと、プライドも高いしね。斎藤くんが僕をすごく慕ってくれていたものだから、気になるとも素直に言えなかったんじゃない?」
「……」
「それで、遠くで見ているうちに、気がついたら真似してたんだろうね。…似てないけど。」
似ていないけどは余計だ。
似てるわ。
