
エスキス アムール
第61章 愛しい人会いたい人好きな人
『波留くんの言いたいことはよくわかった。もう、お別れだね。
もう、電話も会いにも来ないでね。』
留守電を聞いたとき、
思い出しても、涙が出てくる。
どうしてこんなことになってしまったのか。
それは俺が悪い。
木更津にきちんと説明すればこんなことにはならなかった。
木更津に甘えて、俺たちの関係を過信しすぎが招いた結果だ。
いくら愛し合っていたとしても、
いくら信じていても、
言葉で、身体で、心で説明しなければ、信頼なんていうものはあっという間に崩れてしまう。
信頼関係の脆弱さは、仕事上でよくわかっているはずなのに。
どうして俺は、仕事とプライベートを重ねて考えられないのだろう。
矢吹の帰りを待ちながら、そんなことを考えて、ここのところ毎日泣いていた。
後悔したって済んだことは仕方がない。
いつもだったらそう思って、特に悩みもしないけど、
今回ばかりは後悔せずにはいられなかった。
