
エスキス アムール
第66章 木更津の動揺
あれから、矢吹とは仕事で会う機会があったのだが、帰り際、矢吹が一言漏らした。
『なんか、さ。光平くんってすごいよね』
『え…?』
『僕がどんなに脅してもさ、全然動じないの。
矢吹の所に波留くんが行くわけないって。』
『……』
俺は当然赤面して、矢吹はあーもう、ラブラブかよと言って帰って行ったのだけど。
その一言で、考え始めた。
そういえば、木更津って、俺のことで死ぬほど焦ったことあるっけ。
って。
はるかちゃんの所に行かせる時だって、余裕だったから俺を行かせたわけだし。
この間だって、矢吹のお母さんのことは俺が出ていった次の日には新聞で知って、大まかなことはもう理解していたみたいだし。
