
エスキス アムール
第66章 木更津の動揺
「んー…はる…」
車の中で、社長が呟いた。
隣をそっと覗くと目は閉じられている。
あ…寝言…、
社長が寝言言っているところなんて初めて聞いた。
しかもまた波留くん。
ほんっとうに、無駄に熱すぎでしょう、このカップル。
波留くんも波留くんで、あんなに社長のことを求めているところを見ると、
今まで女の子と付き合っても、たいして傷つかなかったのは、昔からそういう気があったんじゃないかと思う。
…私だけのせいじゃあ、ないような…
悪いとは思っているし、あの時のことは深く反省しているけど。
昔のことを思い出しながら、クスリと笑う。
時計を見ると時間が近づいてきていた。
車の外を見て、ある人を探す。
そして、見つけた。
社長が眠っているのを確認して手を振った。
そろそろ、ね。
携帯を、握り締めた。
