《番犬女》は俺のもの
第22章 茜サンは、強いよね
「──…そして見事に身代金をいただいちゃった犯人は、末永く幸せに暮らしましたとさ」
めでたし めでたし
「おい、なに勝手に日本昔話風にしあげてる…」
「え、面白くない?」
「…っ」
茜はその後、持ってきてやった制鞄を零に渡した後で、彼のマンションに二人できていた。
いつぞやに訪ねたとおり…
その部屋にはソファーと硝子テーブルと隅のベッド以外に家具らしい家具は見あたらない。
正面に窓越しの街並みを見おろしながら、零の横に立つ彼女は零が用意した紅茶を飲んでいた。
普段は紅茶なんて飲まないがやはり彼の淹れてくるこれは口にあう。
ズズズ...
熱いそれをすすって含む。
「──…つまり…」
そして茜は切り出した。
「そのファースト・シーなんたら……英国海軍のお偉いさんの息子が、お前ってことで」
「……」
「…そういう事でいいのか」
ここで『ブー』とか言い出したら本当にキレてやる。恐る恐るといった感じで彼女は聞いた。