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すべてはあの日から

第9章 想いよ、とどけ…



追いかけたかった


涙を優しく拭って、


抱きしめたかった。



でも、



俺にはまだできない。



なんたって、

これから“説得”という大仕事があるのだから…


俺はそっと籠に鼻を近づけた。



……シフォンケーキかな?


鼻孔を通り過ぎる薫りに、

頬を緩めつつも、



一段と気を引き締めた。

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