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すべてはあの日から

第2章 夜桜パイ


「斎藤さん、お手洗いお借りしてもいいですか?」

「うん、そこの突き当たりの右手にあるよ」


お手洗いへの通り道の途中、

私はある一室の前で足を止めた。


畳の一室に仏壇があった。

そこには若い女性の写真と、

シンプルな指輪


そして、

斎藤さんの左手にうっすらと指輪の日焼けの痕を見て、


「斎藤さん、結婚なさってたんですね」

「………うん…」


斎藤さんの新たな一面を垣間見た気がしたけれど、

それ以上は何も訊けなかった。

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