すべてはあの日から
第8章 対面
ホールには既に多くの著名人で溢れていた。
私はお婆様と共に 挨拶に回る。
名前も顔も知らない方々ばかりで、気が張りつめてしまう。
見かねたお婆様が、「少し休んでいなさい」とホールの隅にあるイスを指した。
何だか色んな人に観られていて、落ち着かない…
ぼーっとしていると、突如、目の前にグラスが現れる。
「疲れたのかい?」
50代の紳士的な男性が、シャンパンのグラスを傾げる。
所々白髪が見えるが、それもまた上品に揃えられ、
目尻の皺が、優しい印象を与える。
「こういうものには慣れていなくて…」
「品定めする視線が不快だろうね」