すべてはあの日から
第9章 想いよ、とどけ…
……眠れない
自室のベッドから体を起こし、カーテンを肩幅ほど開放する。
闇と化していた室内に、一筋の光が射し込む。
明るさに目が馴れない…
瞼を閉じ、目を細めて月を仰ぐ。
「……あ、れ…」
月が…揺らぐ…
頬を伝ったそれが、床に零れ落ち、
やっと涙なのだと理解できた。
……今は 斎藤さんには会えない…
斎藤さんの目を見たら、きっと絶望してしまう…
この状況に。
好きだと自覚したのに、
私の想いが報われないかもという恐怖、
立ちはだかる縁談の壁、
……誠さん、
一見強引な振る舞いが目立つけど、
最終的には私の気持ちも尊重しようという姿勢が窺える…
私が誠さんと結婚しても、幸せになれると思う。