Slow🎵Step 〜不器用な二人のラブストーリー
第12章 Step 12
「こんにちは すみません、里見さんはお手隙でしょうか?」
遠慮がちに研究室を訪ねると少し間をおいて里見が顔を出した
「一果、 ちょっと待ってて」
しばらく待っていると慌ただしく戻ってきた里見に促され研究室の外に出る
「お待たせ、この時間なら学食空いてるな 行こう」
「え? 研究室空けちゃって大丈夫ですか?」
「ああ、少しの間だけ 頼んできた」
「忙しいのわかっているのにすみません」
「いや、いいんだ それより… 熱、大丈夫なの?」
「はい、もう大丈夫です」
「いつも時間取れなくて、ごめん…」
俯き加減でふるふると首を振る一果
「メールも… うちの研究室、スマホ厳禁なんだ 研究室に詰めてる時は電源落としてるから 一応シフト組んでいるんだけど、昼夜関係ないからタイミング悪くて返信出来なくてごめん」
一果としては夜中でもなんでもメールして欲しかったが自分の時間も取れないほど殺人的に忙しい里見にそんな事は言えなかった
「一果、ミルクティーだったよね あそこ、空いてるから座ってて」
「は、はい」
久しぶりに呼ばれた名前が少しくすぐったい
カフェ兼用の学食は時間が時間なだけに空いていたが、ちらほらと残っていた学生が目ざとく里見の姿を見つけて興味津々にこちらを伺っている
「キャー!!! こんな時間にこんなところで里見さんに会えるなんてラッキー」
「ねえ、あの子誰? 里見さんとツーショットで現れたわよ」
「里見さんてああいうのがタイプなの? 嘘でしょ」
「まっさかぁ あんなお子ちゃま、親戚の子? 妹とか?」
「そうよね、まさか」
…むうぅ 全部しっかり聞こえてますけど
俯いて座っている一果の後方から割と大きめの声でヒソヒソと囁き合う声が聞こえてくる
「里見さん、ご機嫌よう」
「里見さん、ご機嫌いがが?」
ドリンクカウンターでは里見が早速声を掛けられている
「あちらで一緒にお茶でもいかが?」
「あら、里見さんがお一人なんて珍しいこと ご一緒しませんか?」
「いや、悪いけど、連れがいるから遠慮してもらえるかな」