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3月の僕たち

第4章 雑談4

夕食のテーブルセッティングをしながらハルちゃんが珍しく優しい表情で慶矩に声をかける。


「慶矩さん誕生日のことありがとうございます。ダイさんとても嬉しそうで・・・フフフッ」


 ハルちゃんから珍しく上機嫌な笑顔を向けられた慶矩がちょっとドヤ顔をする。


もともと慶矩はハルちゃんに一目ぼれし「上出の半歩後ろを歩く姿が健気」だの「無愛想な上出にはもったいない可愛い笑顔」だの「上出の代わりに俺が守ってやる」なんて、上出君に対抗心燃やして二人の登下校デートの邪魔をしていた事などすっかり忘れている。

そんなだからハルちゃんの信用が無い。
いくらダイの好きな人だとしても、大切な従兄を託せないでアレコレ世話を焼き、お邪魔虫の立場が逆転しているんだ。


「俺のこと見直した?」


 慶矩が図に乗って自慢気だ。

ハルちゃんは一瞬苦笑を浮かべたが、すぐに子どもを褒めるように優しく微笑んだ。


「はい、見直しました」


優しすぎだよハルちゃん。
本当は「これくらいでドヤ顔するな!」と言いたいだろうに―――。


「ダイさんは本当にホワイトデーが誕生日なんだ?」


上出君がカウンターから出てきてハルちゃんを引き寄せた。

まるで慶矩から遠ざけるように・・・。

上出君が人前で安全確保の目的以外でハルちゃんを引き寄せるところを初めて見たような気がする。


もしかして―――ヤキモチ?

ハルちゃん、愛されてるんだなぁ。
それに、慶矩も含めて僕らは空気扱いなのか?

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