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~夢の底─

第6章 惜春譜

「…久しぶりの仕事どうでした」「まだ…なんかダルい…。休みグセになっちゃった─みたい」「今日は診てもらったんでしょう」「うん。それから打ち合わせ…して─さ」……ホゥッとユノが息を吐く。「髪、乾いたから…寝んで、ユノ─」  ドライヤーからの温風をチャンミンは止め、鏡の中の、乱れ髪に包まれた小さな貌を覗く。
 「あ…。眠いよ」黒いヘアブラシでショートの茶がかった髪を、とかす。「少し─伸びました…ね」「チャンミン」「はい」鏡に俯き、チャンミンの掌の中のブラシの動きで、茶色の髪に撫でられる貌は、鏡を通り抜けてゆく幻想の少女に映る。
 ─キラリと鏡が壁掛けの、小型ランプに反射すると、黄金の光をチャンミンの髪が生む。  
 「俺の考え。まだそれだけの話なんだけど」「はい」手を止める。
「1年、出来れば2年。歌手休業したい」「ユノ」
ユノの背に手を当てて、顔を覗き込み「体が、そんなに…調子悪いんですか─検査したでしょう?」「結果は良好。担当医が休み入れて、歌えば長く歌えるって話した」「…ユノは…昔、喉─、手術してた」「子供だった頃で、それは手術で治ってる。別の問題なんだ」歯を見せて笑って云う。

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