~夢の底─
第7章 晩夏風──
顔を振り上げたチャンミンの頬に、海風が人魚の唇に似た感触の、暖かい海の潮の香りのキスをする。渡せなかったのはシャトルの他にも、二人で撮った写真がある。ヒース─彼にとっては今は遠い想い出だけの写真。それだけではなく、渡したいもの話したいこと…まだまだ、たくさんあった。
──遠い未来を約束して去っていったようなヒース。何度も行き過ぎては帰って来る風を思わす彼……。
深い眠りから醒め、目覚めたばかりのように、チャンミンは何度も繰り返し、まばたきをする…。長い睫毛の黒目がちの眼を擦る…。また風が、早朝のような挨拶を、チャンミンの頬に送って来た。
…チャンミンさん…!踵を返そうとしたチャンミンにその瞬間、懐かしくて朗らかな、声が遥か彼方から届いた。
──遠い未来を約束して去っていったようなヒース。何度も行き過ぎては帰って来る風を思わす彼……。
深い眠りから醒め、目覚めたばかりのように、チャンミンは何度も繰り返し、まばたきをする…。長い睫毛の黒目がちの眼を擦る…。また風が、早朝のような挨拶を、チャンミンの頬に送って来た。
…チャンミンさん…!踵を返そうとしたチャンミンにその瞬間、懐かしくて朗らかな、声が遥か彼方から届いた。