テキストサイズ

マシュマロボイス

第2章 風に包まれてた

入学式。
桜が空から舞ってくる。

その風景と合わせて一昨日の声が聴こえてくる。

『ひらひらと花が──』

「雅紀、おはよー」
「あ、翔ちゃん」

振り返ると、翔ちゃんの背後から風が吹いてきた。

「何してるの?」
「んー、なんでも」

学校一番の大きい桜の木を見上げる。

「何かあったの?」

「特にないよ」

「良いことあったくせに」

二人で桜の木を見上げる。

「えー」

なんで分かっちゃうの?
凄いね、翔ちゃん。

「言ってみなよ。雅紀と俺の仲だろ?」

「えー、恥ずかしいわー」

「色恋か」

「翔ちゃん、怖いなあ」

翔ちゃんと俺は幼馴染み。
小さいときから、俺の左には翔ちゃんがいてくれる。

「雅紀、顔に出やすいんだよ」

「そうかな」

そんなこと言われたら、
どうしても反射的に顔を触ってしまう。

「顔触ったって、わかんないだろ」

ポカッと頭を叩かれて、
手を引かれる。

「ほら、始業式間に合わないよ」

ストーリーメニュー

TOPTOPへ