君のそばに
第5章 左手
フジ「 あ、分かった。キヨも俺に抱きついて欲しいんでしょ? 」
キヨ 「 は?なわけないだろ馬鹿 」
いやいやいやいや、して欲しいですよ、はい。
けど、んな事すんなりはい、して欲しいですなんて言えないだろ。
フジ「 いやいや、遠慮しないで、ね? 」
キヨ 「 いやいや、遠慮とかじゃなくておかしいから 」
早く...しろよ!!!!???
フジ「 んー、そっか。ごめんごめん 」
そう言ってフジは子供を扱うように、俺の頭を撫で回す。
くそっ。
嬉しい。
いやいやいやいや、違う違う、抱きしめろよ!なんで引くんだよこの草食野郎は!!
キヨ 「 ...、左手かせ 」
フジ「 ?はい 」
キヨ 「 握手してやるよ 」
フジ「 ...そっかそっか、握手、これで仲良しだね? 」
フジは俺の右手をぎゅっと握る。
ああ。もうなんで。なんでこいつこんな鈍感なの。
なんでわからないんだよ。
俺の今の鼓動を聞かせれば気付くか?
いっそのこと心臓を取り出してこいつにやりたいくらいだぜ。
フジ「 じゃあ、左手はキヨ専用だね 」
そう言ってこいつは俺の右手を自分の頬にあてる。
そうだな。
抱きつくとかそーゆーのじゃなくて、これでもいいや。
一応、繋がってる。
俺とこいつの...。
キヨ 「 じゃ、お前の左手は俺のだから絶対誰かに使うなよ 」
フジ「 はいはい、わかってるよ 」
普通、気づくだろここまで言ってんだから。
ほんと、鈍感。
終わり