テキストサイズ

君のそばに

第8章 お餅焼きし者



______


なんだか懐かしい記憶を思い出していたようだ。

もう一年も経つのか...、楽しいとあっという間とかいうけど、ほんとそのとおりだなぁ。

俺は少し胸がキュッ、と締めつけられた気がした。

こいつらと馬鹿できるのも、今のうちだよな、大人になったらみんなバラバラになっちゃうのかな。



キヨとも..離れちゃうのかな。


ずきん、ずきん、と胸が痛む。

ずっと一緒にいられたら、どんなに幸せだろうか。

フジ 「 ...キヨ、俺、お前と離れたくないみたいなんだよね... 」

そんなことをぽつり、と呟きながら、再び頭を撫でる。

キヨも俺と同じ気持ちだったらな。

...あれ、今何分だろう。

俺は後ろを振り向き時計を見る。

フジ 「 え!?もう30分経ってんの!?楽しい時はあっという間って言うけど、本当にそのとおりだな 」

そろそろキヨを起こそうかな、ってかこいついくらなんでも寝すぎだろっ。



________


夢の中。


キヨ 「 ...ッ?ここはどこだ? 」

周りが真っ暗で何も見えない。

明かり1つないとこんなに暗いもんなんだな。

俺はあてもなくただ真っ直ぐ突き進む。

...何か突き進まなきゃいけない気がしてね。

キヨ 「 フジー?こーすけ、ヒラ?どこにいんの? 」

俺は暗くて何も見えないが周囲をキョロキョロしてみる。

しかし、何も見えない。

キヨ 「 おばけなんてなーいさ!おばけなんてうっそさ!ねーぼけーたひーとが!みまちがえたんだろうがこのクソ野郎! 」

俺は、恐怖心を少しでも薄くするために大声で歌う。

俺の声が暗闇の奥の方へ吸い込まれていく。

キヨ 「 ほんとに誰も...いないのか? 」

汗をかいた手を服の裾で拭ったあと俺はダッシュで突き進む。

怖い...。

怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い。

一人ってこんなに怖いものなのか。

そもそも本当に俺なのか?

俺じゃないのか?声は俺だけど、自分のような気がしない。

キヨ 「 ...っ、だれか... 」

俺は恐怖と不安と焦りで胸がいっぱいで、しゃがみこんでしまった。

もう足が動かない。

フジ「 キヨ 」

キヨ 「 ...フジか?フジなのか? 」

ばっ、俺は顔をあげてキョロキョロと周囲を見渡す。


ストーリーメニュー

TOPTOPへ