君のそばに
第8章 お餅焼きし者
キヨ 「 ふざけてないで出てこいよ!俺は今茶番に付きあ... 」
フジ「 あ、ヒラ!ばいばいキヨ、俺もう行かなきゃ 」
キヨ 「 は?ヒラもいんのか?何で...何で置いてくんだよ!俺も一緒に...! 」
フジ「 ダメだよ、キヨとは一緒にいられない 」
キヨ 「 な、何で...、意味わかんねぇよ!おいフジ!まてよ、おねが...っ! 」
俺は何も見えない暗闇に向かって走る。
こっちにフジがいそうな気がして。
キヨ 「 フジ...っ 」
俺が何かを掴みかけようとした瞬間に周囲が、ぱっ、と明るくなった。
俺は反射的に目を閉じてしまった。
フジ「 そっちじゃないよ、こっちだよ 」
俺が走っていった真逆の方向からフジの声がする。
フジ「 ほら、やっぱり何も分かってない 」
徐々に足が遠ざかっていく。
キヨ 「 まて!フジ!!俺は... 」
俺がぱっ、と目を開けたとき、
そこに見えたものは。
キヨ 「 おわっ!!? 」
俺は机から仰け反って周囲を見渡す。
ここは...教室か。
あれ、みんなは...あ、そうか俺寝てしまってたのか。
あの夢は一体なんだったんだ...うろ覚えでしか覚えてはいないけど、胸くそ悪い夢だった。
ただ、はっきり覚えてるのは。
"ほら、やっぱり何もわかってない"
そりゃ、確かにいつも四人でバカやってるとはいえ、まだこーすけやヒラみたいに昔からつるんでるやつじゃないから知らないことだってある。
だけど、好きな人とかタイプとかそうゆうのは知りたくない。
もし、知ってしまったら、きっと俺はあいつの好きなタイプになろうとしてしまうだろう。
それは俺じゃないし。
もう、なんとなく分かってる。
フジはヒラのことが好きなんだ。
そんで、ヒラもフジが好き。
めでたいことに両想いときたら、俺が入る隙間なんてこれっぽっちもないや。
胸が苦しい。
気付かなければ良かった恋心。
どうせ叶うわけなかったんだから。
キヨ 「 はぁ...、つら 」
俺はくしゃくしゃっ、と髪をかいた。