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【S】―エス―01

第3章 亡霊からの手紙

 ――201X年 4月5日。


 瞬矢は1人、パソコン画面に向かい情報を集めていた。


 画面から目を離し、ソファにごろりと寝転がる。


 あれから4日。得られた情報は、父親の名前が『東雲 暁(しののめ あきら)』ということと、製薬会社の社長だったというわずかなものでしかない。


(今のところ手掛かりになる人物といえばこの『中川 昭夫(なかがわ あきお)』という男なんだが……。……駄目だ。少し休もう)


 左腕で視界を遮ると吸い込まれるように眠りへと落ちていった。


 ――真っ暗な視界の中に、ぼんやりと影が浮かび上がる。――黒髪の少年だ。


 少年は白いブラウスに茶色のハーフパンツ、そして襟元には細長いリボンが結わえられていた。


「……――」


 ぼんやりとした視界に写る少年は笑顔で何かを言い、すっと左手を差し伸べる。


(誰だ? お前は……)


 差し伸べられた手を取ろうとした時、現実へと引き戻された。顔を覆う腕を滑らせると、指の隙間から差し込む光を覗く。


「おー、やっと起きた!」


 そこはいつも見慣れた部屋のソファの上で、背凭れ越しに笑顔でこちらを覗き込む茜の姿が目に映る。
 

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