
山岸君と照井君
第33章 手紙―――……
入院患者は手首に名前入りタグをつけている…
“都 心陽”――――…
「えっと名前…都……」
「みやこ―――…しよ…デス…
変な名前ですよね…読み間違えちゃうし…無理やり感ハンパないですよね…」
彼女は…苦しいのに…絶えず笑顔で俺と話をしていた――――…
「“しよ”さん…いい名前ですよ…
皆を明るく照らす太陽の様に穏やかな心をもてるように…って名付けられたのでしょう…か……いい名です」
「は…初めて言われました…///ありがとうございます」
彼女は、ニコニコして…頭を下げる―――――――…
な―――――…何を…俺は、言っているんだ?
こんな事…
いままで患者と…してこなかった俺が!?
甘ったるい…会話をしている!!
「し、しかし!見るからに…初産ですよね…都さんは…ご家族もこちらに?」
俺は、甘い雰囲気に流されるのを恐れ…
話題を変えた――――――…
「―――…家族は…来ません…
…未婚の母になるって言ったら…
親子の縁を切られてしまって……
私には…家族はこの子だけなんです……」
彼女は…暖かな笑みで……
大事そうにお腹を撫でた――…
