
触れたくない。
第3章 三
次の日、いつものように会社の帰りに彼の家を訪ねた私は、呆然とした。
いつもの場所に彼が傘を差して立っていない変わりに、
そんな置手紙が置かれてあったのだ。
……もしかして、「好き」と言ってしまったのがいけなかったのだろうか。
彼と私は、恋人でも友人でもない、とても儚い関係だった。
それなのに好きと私が言ってしまったことで、
彼の言う”話し相手”という一本の糸が、ぷつりと切れてしまったのかもしれない。
でも、暫く。と書いてあった。それはどういう意味なのだろう?
頭を冷やせってことだろうか。
「沢村」
それとも、彼の暫くは永遠なんじゃ…?
「おい、お前、そんなに怒られたいのかよ?」
「え」
と。
突然目の前に大きな壁ができたと思えば、怒りをおさえた低い声が耳に届いて背筋が凍る。
