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不良に良好

第3章 3



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バッティングセンターのゴリラを見送り、道なりに進むと
突き当たりを右に曲がる。
さらに進んで、右手側に見えてきたのがゴールらしかった。

「ここ、俺の家…」

「ゴールきたー。てかルートに右が多すぎ」

佐山が住んでいるという家は、見た感じ二階建ての一軒家だった。

庭の手入れがされていて、表札もピカピカ光って見える。

「そんなに離れてないなー。じゃ俺も帰るわ」

「うん、もう、真っ暗だし…」

あ、忘れてた。

「お前ケータイ持ってる?」

「え…うん、持ってる」

「番号とアドレス。交換って流れだろ」


あ!
と言うような顔で、佐山はカバンを漁った。

「あれ…あれ?うーん…」


「あー、無いなら俺がメモる。そんなガサガサしてたら指荒れるし」


俺も、ショルダーバッグを手前に持ってきて中からペンと紙をさがした。

…油性ペンしかない。


「ごめん、これ油性ペンなんだけどー…手に書いてもいい?」

簡単に落ちるとは思えないけど。駄目なら明日があるか。

「う、うん!お願いします!」

「りょうかい。ではお手を拝借」

佐山の手を取る。

あれ。コイツ体冷えてんじゃん…


「…はいサラサラっと」

「う…」


佐山の冷たい手が、一瞬ビクッと震えた。

「あ、ごめん。くすぐったかった?でもハイ終わり」

「ありがとう…」

「さっさと家の中入って、あったかいもんでも食べさせてもらいなよ。手ーかなり冷めてるよ」

「夕夜君の手はあったかいね」


…。


「じゃー今度こそ俺帰るね。明日の朝7時、インターホン鳴らさないから自分で出てきて。」


「う、うん!また、明日…」


俺は手をヒラヒラさせて、少し歩くと
背後に玄関の閉まる音を聞いた。








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