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ネムリヒメ.

第15章 イチゴタルト.






………ん!?

葵くんの言う "アイツら"…って、渚くんと聖くん、で…

そんな…限られた休日をあててくれるだけでも嬉しいのに…


「だいたい、ナギと聖は自由すぎるんだっての…」


アタシの髪を掬って指に絡めながら、葵くんはブツブツと呟いている


「やーね、お坊っちゃま方は…なーんて言ってもしょうがないけど」


確かに、渚くんと聖くんは素性は謎だけど、驚くくらいに融通きかせて仕事中に帰ってきてくれたり、側にいてくれたりしたけれど

仕事や境遇なんてそれぞれだから…そんな言い方…


「いいのに…」


アタシは冗談口で笑う葵くんを見上げて小さく首を振る


「え…!?」


「葵くんは葵くんだから……!」


「…………!!」


「だって…」


だって…いつも忙しそうだったのに

アタシの強がりを見抜いてくれたり…

消えていた笑顔に気づいてくれたり…

モヤモヤしてた気持ちを汲んでくれたのも…

笑顔にしようとしてくれたのも…


「…ちゃんといっぱい嬉しかったから」


外見だけじゃない、中身もこんなにもカッコいい彼に、自分を誰かと比べるような言い方をして欲しくなくて…

上手く言えないけどちゃんと伝わるかな


「っ…だから、そんなの……」


ぇ………


そこまで言うと、アタシの顔を見下ろしていた葵くんの瞳が少し揺れて、少しだけ寂しそうに彼は微笑んだ




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