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ネムリヒメ.

第21章 あの夜の王子様.







「なぁ、戻れ」

「ゴメン、無理なの…」

「はあ!? 呼びにこいって言ったのお前だろ」

「だって……」


葵がテーブルに突っ伏すと、くぐもった嘆きが聞こえてくる


「…このままじゃ、聖のクルマ…自腹になっちゃう」

「は……」

「勝つまで戻れない……」

「………お前ねぇ…」


すると…


「「…………!!」」


葵の目の前に大量のチップがガサッと差し出された


「っ、私の使ってください」

「私のもっ…!!」

「なによ、アタシが…」


黄色い声と共に次々とチップが置かれていく


「…ありーがとっ♡」


そんな光景に振り返った葵は、ころりと表情を一変させ、手を差しのべた女性たちに"必殺・オンナ殺し"の異名をもつキラースマイルを繰り出した


「最悪だな、お前…」

「そ…!?」

「いや、珍しく両腕にオンナ抱いてないだけマシか…」


耳を傾ければ、周りからそれを望む声がちらほらと耳に入ってくる


「両肩にもオンナ乗せてねぇし」

「…オレ、そんなコトしてたっけ!?」

「っ………そのせいかよ、いつもよりオンナが沸いてる怪現象は」

「さあ……オレ、一途なオトコに転生したから、わかりませーん♡」

「………………死ね」


ヘラっと笑って返す葵の声を、渚の冷笑が更に跳ね返す


「つーか、早く勝って戻ってくんねぇ。アイツと雅、置いてきてあるから」

「えー…なら勝たせて。ナギ、カジノのプロでしょ」

「知るかよ、……お前、常連だろ。ディーラーのクセを見抜け」


すると、渚が葵の耳元に顔を寄せた




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