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ネムリヒメ.

第22章 あの夜の…….









カチャッ…



…………!!



耳に届く無機質な音と、こめかみに押し当てられた冷たくて硬い感触


一瞬にして血の気が引いたような感覚に襲われる

ゾッとして反射的に息を呑んたアタシは、ベッドから降りようとした姿勢のまま凍りついた


全身のあらゆる神経がこめかみに集中して、まるで危険を知らせる警鐘のように耳鳴りが聞こえる


初めての感覚…


けれど、それがなにか…

自分に突きつけられいる物がなんなのか

怖いくらい明確に想像がついた


「脱走は禁止だよ…」

「ッ…!!」


後ろから耳元で囁かれるそんな声

その声に、恐る恐る視線だけを横に動かすと、夜景を映した曇りのない窓ガラスに、黒く鈍い光を放つ物をこめかみに押し当てられた自分の姿が映っていた

そしてその後ろには、手にしたそれをアタシに突き付け、甘く微笑むブラックスーツのオトコの人の姿がある


…………!!


その衝撃に、まるで撃ち抜かれてしまったかのように、なにもかもが弾け飛んだ頭のなかが真っ白になった


「…仔猫チャン♡」

「………」


囁かれる柔らかいハスキーボイスとは裏腹に、極度の緊張で固くなったカラダに滲む冷や汗


「会いたかったよ、久しぶり…」

「……!!」


すると、耳元に落とされる口づけに、こめかみに押し当てられた感触が急に緩む

それと引き換えに、後ろから冷たくなったアタシのカラダに回される腕


え…


フッと舞うように香る薔薇の匂いが鼻を掠めた






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