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ネムリヒメ.

第22章 あの夜の…….








ドクン…


アタシを包み込む香りに過る闇

暗闇に引きずり込まれて唇を塞がれ自由を奪われる

何かを飲まされて…

それから…


「っ…」


明確に甦るカラダ刻み込まれた恐怖


…夢じゃ…ない!!


ビクリと強ばったカラダをギュッと抱かれて、布の擦れ合う音とカチャ…と鳴る金属音

それは手首に掛けられた手錠の音と、後ろから正面に回された手のなかに握られたモノのたてる音


「…やっと見れた、その可愛い顔♡」


胸に突きつけられる拳銃…

鈍く、黒く、寡黙な光を放つそれは"死"という言葉を反射的に意識させる


「……ッ…ん」


銃口がゆっくりと胸元を滑り、冷や汗が滲む首筋を撫でる

酸欠になったように頭がくらくらする

今にも心臓が止まりそうだ

息を飲み込むゴクリという音がやけに大きく聞こえた


「久しぶり…」

「っ…」


物騒なモノの突きつけながら鼓膜を揺らしてくる甘い囁き…


「どうしてひとりでフラフラしてたの!? 危ないのに…」


危ない…

どっちが…!?


できることならそう叫びたかった

だけど、息をするので精一杯だ


「捕まえたのがオレで良かったね、千隼チャン」

「………!!」


どう…して…

唱えられたアタシの名前

それに、さっきから繰り返される見知ったような言葉の数々


誰…


だけど自分に心当たりはひとつもない

だけどなにかが引っ掛かかる

引っ掛かって仕方がなかった





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