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第1章 プロローグ


プルル、プル、プルルルルル
薄暗い部屋に携帯の着信音が鳴り響く

「もしもし、あら?久しぶり。
うん、うんうん、分かった。19時ね。
えぇ、もちろん。当たり前じゃない。
じゃあまた後でね」

女は電話を切りバスルームに
向かったようだ。

ランジェリーのような薄手の
ルームウエアを脱ぎ、
大きな鏡で全身を確認している。

右腕の二の腕を引っ張り苦い顔をした

「ちょっと油断してたわ」

そう言ってグイッと鏡に顔を近づけた。
笑ったり、ウィンクしたり、
上目遣いをし、最後は鏡の中の自分に
流し目をしながらガラス張りの
バスルームに入っていた。

バスルームの窓からは
綺麗な東京の夜景が見える。
地上30階は越えているだろうか。
車がまるでオモチャの様に見える。
視界を遮るものはなにもない。
強いて言うなら東京タワーが
大きく存在を主張していた。

丸いバスタブには泡がポコポコ
浮かんでいて、甘ったるいバニラ、
と言っても高級そうなバニラの匂いが
立ち込めていそうな雰囲気だった。

女はつま先をすっと伸ばし、
まるでバスタブを焦らすかのように
ゆっくり、ゆっくり身を沈めていった。

女は小さく声を上げた。

「あぁ」

そうして東京タワーに向かって
ニッコリ笑ってみせた。

バスタブから出た女は
ゆっくりと時間をかけて、
身体中に泡を乗せていった。

それはまるで、
泡と踊っているかのように見えた。
腰をくねらせ、左腕をまっすぐ伸ばし
右手でゆっくりとスポンジを滑らす。

物欲しそうな顔で女は
そのスポンジを見つめていた。

どれぐらいの時間が経っただろうか。

女はやっとバスルームから出た。
頭にターバンを巻き、
スキンケアを始めようとした瞬間。

リビングから大音量の音楽が聞こえた。
女は鏡に向かって呆れ顏を作った。
そして早々とスキンケアを終わらせ
リビングに向かった。











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