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先生…お願い。早く治して・・・

第13章 不安は確証へと…

その頃……


石川はオペを終え院長室へと戻った。



“ふぅ〜、、”と大きなため息をつき院長室のソファーに倒れこんだ。


トントン……


『どうぞ』
そう言って、石川はソファーから起き上がった。


空いた扉から現れたのは司馬だった。


『なんだ、お前か…。珍しいな…わざわざ俺のとこに来るなんて』っと皮肉たっぷりの笑顔で言った。



「まぁなっ!」
フッと鼻で笑うと、石川と向かい合うようにソファーに“ドンっ”ともたれ掛かり座った。



『コーヒーでも飲むか?』

「あぁ〜」


石川は立ち上がり、コーヒーをカップに注ぎ入れ司馬の前に置いた。


『で?』
コーヒーを飲みながら石川が尋ねた。


「院長先生の患者を診察したんで、ちゃんと報告はしないと…、と思ってなっ」
司馬も皮肉交じりで返す……。



『おちょくってないで、早く言え。疲れてんだよ!』



「……さっき診察してきた……。俺の感だが、多分反応し始めてる…。」
司馬は先ほどまでとは違い少し厳しい顔をした。




その言葉に、急に石川の顔色が変わった…。




『おいっ………、綾ちゃんか?』



「あぁ…。」と司馬は表情を変える事も無く答えた。



『なぜ分かった?』


「心音を聞いている時、俺も…最初はたまたまだと思った…。だが、左胸に当たった時だけ、顔を歪ませていた。俺に気づかれないように平然を装っていたけどな……。」



『だからってそれだけじゃ、分からないだろう』

石川は少しムキになって言い返した。


「俺だってそれだけで判断した訳じゃない…。確証を得る為に腹部の触診をした。子宮、卵巣付近にも痛みはあったはずだ。あの表情を見てれば分かる………。
それに、怪我をする前のあいつを昨日診察したばかりだ。だから分かるんだよ。」


『…………。』



「ここからはお前の仕事だ…。もう俺の患者じゃない…。お前の患者だ…。」



司馬のその言葉に石川はソファーにもたれ掛かると天を仰ぎ、ゆっくり目を閉じた。そして深く大きく息を一つ吐き、ゆっくりと目を開け、元の姿勢に戻すと意を決し

『そうだな…。後は俺が確かめる。』

残ったコーヒーを一気に流し込むと、綾のいる部屋へと向かった。



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