1人じゃなくて。
第9章 センス
『ん―…』
「ありましたか?」
『ない!そんなに人気なのかしらね。CMの商品…』
周りをみると、お洒落な女性や高校生くらいの女の子がたくさんいた。
それにくらべて私……
場違いだ。
『もしかしたらあれ、録画だったりして』
「え……」
『ふふっ!冗談よ。まぁでも…1つの商品にこだわらなくて良いんだし…別の服探しましょう!』
「そうですね」
敬語だけど…周りからみたら私達、家族に見えてるのかな。
「加奈子さん!」
『?なぁに?』
「服…加奈子さんが選んでくれませんか?」
つい大きな声を出してしまった…
『うん!いいわよ!』
「え、いいんですか?」
目を見開く。
服ぐらい自分で選べって言うのかと思ったのに…
『奈瑠ちゃん今…私が自分で選べって言うのかと思ったでしょ。』
!
「口に出していましたか!?」
なんでわかって…
『だって奈瑠ちゃん分かりやすいもの!………私がそんなこと言う人に見える?』
加奈子さんは腰に手を当てていた。
少し頬を膨らまして。
怒ってる……のかな?
「見えないです。」
『でしょう!だから服くらい私に任せて………できれば敬語やめてほしいなって。』
少し首を傾げて私に微笑みかける。
「むむむ無理です!タメ口なんて…」
思わず帽子を深く被る。
『ふふっ!わかったわ。それじゃあ無理に強制することはしないから…』
加奈子さんの手が私の頬にそっと触れる。
『ゆっくり少しずつ、馴れていきましょう!』
「加奈子さん…」
加奈子の優しさが
私の胸を締め付けた。