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第76章 サクラ咲け by ガーベラ♡

それは、息をするのも忘れそうな風景だった。

数日前に、桜の開花宣言をテレビで聞いた、
3月の夕暮れ時。

桜並木の土手に、その人は座っていた。
そのすべてが絵画のように、俺の心に
強い衝撃を与えた。

「大野先生..」
画の中のその人に、俺は静かに声を掛けた。

「ああ..松本..くんだったよね」
振りむいて俺の名を呼び、にっこり笑った先生は、
夕暮れの光と桜の花びらの中で、
今にも消えてしまうんじゃないかと
錯覚するほど、美しくて、儚げだった。

俺は高校3年生になろうとしていた。
俗にいう進学校に通っていて、
いよいよ4月からは受験生..

でも、見えない将来に期待できず、
やりたいことも見つからず、

当然やる気が起きるはずもなく、
中途半端な毎日を過ごしていた。


惰性でそのまま、
中学から通っている塾にも行っていた。

その塾に、去年から講師として来たのが
大野先生だった。

有名国立大学在学中の先生は、
主に高3クラスの担当なので、
俺は殆ど話したことがなかった。

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