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第87章 green shoots by つぎこ







「…なんで泣くんですか? 」

「…。」

言われて初めて、自分が泣いてるコトに気付いた。


「… 今夜の主役は櫻井さんなのに。」

彼は困ったように、俺の涙を指先で拭う。

「…お前だろ。」

涙を見られた挙げ句に慰められるだなんて…。
あまりの不甲斐なさに、その手を無碍に払いのけた。



「…連絡は、櫻井さん宛だったでしょ。それが先方のご意向ですよ? 」

彼は払いのけられた手で、俺の両手を拘束すると、真上から見下ろしてきた。

「…営業やってて、それくらいも分かんないんですか? 」

呆れたように呟いて…。

「…なんで大野さん、誘ったんですか? 」

何故かいきなり、大野の名前を口にして…。

「…俺は二人きりで櫻井さんをお祝いしたかったのに。」

ソファーが軋み、柑橘系のフレグランスが唇を掠めていった。



「…俺、負けませんからね。」

フレグランスとともに、挑戦的な囁きが降りてくる。


いつか追い付いて…。

貴方をモノにする。

俺ね、目標が高いほど燃えるんです。
これでも結構貪欲で、計算高いとこ、あるんです。


欲しいものを手に入れるためには、ね…。




END

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