センチメンタルメモリー
第7章 夜蝶
「本当は店のママがこんなことしちゃダメなのかもしれないけど、私はあなたを応援するわ。
だって直哉さんが見込んだ女の子なんだもの」
椿さんの話を黙って聞く私。
何も言えない。
まだこの世界のことを私は知らないから。
なんて言っていいのか分からない。
「お客様も良い人ばかりじゃないわ。
ストーカーされたり、触られたりするかもしれない」
私の瞼にシャドーを乗せながら言う。
椿さんがどういう表情をしているのか分からない。
「だから、なんかあったらすぐに私か直哉さんに言ってちょうだい。
そうすればなんとかするから」
アイラインやつけまつげが瞼を重くさせる。
「頑張って」
よし、いいわよと椿さんに言われ目を開ける。
鏡の中には私だけど私じゃない人が居た。