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aspirin snow

第8章 *******

別れの朝。

いつもより早く目が覚めてキッチンに向かうと。

彼が暖炉の横の窓から外を眺めていた。

私の気配に気付き、


 「おはよう。」


振り返り、微笑む彼の後ろでは。

ダイアモンドダストが輝く。

モーニングコーヒーを淹れて、彼の元へと戻ると。
彼は外に出て、ダイアモンドダストに触れようと、手を伸ばしていた。


 「また、風邪、引きますよ。」


たっぷりとコーヒーの入ったマグカップを渡すと。

私の中の偽りを見透かしたような顔をして、


 「ん。」


コーヒーを受け取った。


降り続けるダイアモンドダストに視線を移し、
コーヒーを一口飲んで。


 「鼻の頭が千切れそうなくらい、寒い。」


そう言った彼は私を包み込む。

私の鼻の頭に、
目を閉じた彼の、
冷え切った鼻の頭がくっつく。


 「来年も、再来年も。
  これからずっと。
  雪原を散歩して、ダイアモンドダストを見るために、
  ここに来てくれますか?」


彼は僅かだけ。

ほんの少しだけ頷いてくれたから。

彼の額が私の額にくっつく。


 「それじゃ、約束。
  まだほかにも、一緒に見てほしい景色がたくさんあるから。
  待ってるから。」


私の言葉に、彼が目を開け。

額が離れたと思ったら。

次の瞬間には、彼の冷えた唇が私の唇に触れ、

ほんのりコーヒーの味がした。

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