
友恋
第6章 表情
「あ、うん…妹のついでに買ってくれたみたいで…」
なぜか言い訳をしているみたいになってしまう。
「ゆう…嬉しそうだね。」
「えっ…?」
悠樹が見たことのない複雑そうな顔を見せた。
「…悠樹…?」
何と言っていいのかわからず、私は静かに名前を呼んだ。
「あ、わりぃ。良かったな、このキーホルダー全種類制覇できるかもな。」
悠樹はハッとすると、すぐにいつもの悠樹に戻り、笑顔を見せてくれた。
「あ、うん…」
それでも私がうまく返答できない。
「…そんな顔するなって。あ、そーいや俺隣のクラスのヤツに用あるから行くわ。」
そう言うと悠樹は教室を足早に出て行った。
「…橘くんも意外と感情が顔に出るよね。」
楓が笑いため息をついた。
悠樹のあの表現できない顔、初めて見たかもしれない。
幼なじみの私ですら、まだ完璧に悠樹の全てを分かっているわけではないんだ。
