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覚醒

第1章 両親の寝室

ミーン、ミーン、ミーン…

真実が自慰を覚えたのは、小学五年の夏休みもそろそろ終わろうとする頃だった。

その日は普段に増してうだるように暑かった。

当時、家庭にエアコンがある家など少なかったのだが、真実の家には、一部屋だけエアコンのある部屋があった。それは両親の寝室。

「子供は、暑くても外で遊びなさい」

と、いつも言われていて、この部屋には滅多に入らせては貰えなかった。しかし、こう暑くては何をする気力も失せる。

リビングのテーブルで、残り僅かな宿題を片付けようとしていた真実だが、中々思うように捗らない。鉛筆をノートの上に投げ出すと、ソファにゴロンと寝そべった。

真実の額や、首筋に粒状の汗が流れる。真実は天井をぼんやり見つめて、捗らない宿題とこの暑さに憂鬱な気分になっていた。

真実の両親は共に医師として大学病院に勤務しており、急患だの夜勤だのと忙しく、家族三人が揃うことは滅多に無かった。

だから今日のように、真実一人で留守番をする事など日常茶飯事になっていた。

真実は、おもむろにソファから立ち上がると、キッチンへ向かう。冷蔵庫の扉を開けるとひんやりと冷気が真実を包み込んだ。

麦茶をコップに注ぎ、ゴクゴクと喉を鳴らして一気に飲み干す。
顎が上がると、首筋の大粒の汗が一筋ピンクのTシャツの襟元へ流れ込んでいった。

「フウ~」

大きく息をつき、麦茶で喉が潤いほっとしたのも束の間。再び大量の汗が吹き出してくる…。

真実はふと、両親の寝室へ目をやり、イタズラっぽく肩をすくめて微笑んだ。

「ちょっとだけならいいよね…。こんなに暑いんだもん…」

真実は、悪いことをしているという後ろめたさを誤魔化すかのように、言い訳染みた言葉を呟くと、両親の寝室へ向かい、ドアをそっと開いた。

窓もカーテンも締め切られた寝室。ムッとするような熱気が立ち込めている。
真実は、エアコンのスイッチを入れると、風が直接当たる場所に立った。
生ぬるい風が真実の顔を撫でる。そのうちに心地よい冷風に変わり、おさげ髪を揺らす。
額や首筋を流れる汗も一気に乾かしてくれた。

一頻り心地よい冷風を味わっていたが、久しぶりに入る両親の寝室は懐かしく、辺りをキョロキョロと見渡した。

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