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覚醒

第5章 秘め事の露呈

「ただいまー」

母、夏海が数日振りに帰ってきた。

なんでも、着替えを取りに戻っただけらしい。

「真実、ゴメンね。何時もあなたに甘えてばかりで。ちゃんと食べてる?大学はどう?そろそろ忙しくなる頃じゃない?勉強してる?のんびりしてると、後が大変よ。
ママね、またこれから病院に戻らなきゃならないの。癌の新しい症例の研究でね。近いうちに学会に出すの。全国に研究チームがあってね。福岡、大坂、京都、名古屋、札幌…。来月から出張。
なんだか、売れっ子アイドルのコンサートツアーか、水戸黄門様みたいでしょ?ふふふっ。
パパは元気?最近職場でもあまり会えなくて。
パパのことお願いね。じぁね」

母は、一方的に捲し立てると、慌ただしく、病院に戻って行ってしまった。

「もう、ママったら。一人で喋って、さっさといっちゃうなんて」

真実は、幼い頃、あのポラロイド写真を見つけてからしばらくの間、両親と顔を合わすのが気まずかったが、殆ど家にいない両親なので、時が経つにつれ、気まずさは薄らいでいった。

慌ただしく出て行く母を見て、まるで台風のようだと思い、クスッと笑った。

暫くして、母と入れ替わるように父、聡が帰ってきた。

真実は、また「台風か?」と思ったが、意外にも、父は今日から数日休暇が取れたという。

真実は、嬉しかった。

父と二人で過ごせる…。

父と食事をしたり、TVを見たり、普段通りに過ごしているつもりだが、何故か嬉しさと恥ずかしさと緊張が入り雑じるような複雑な心境だ。

「真実、学校はどうだい?忙しいだろう?」

「うん、でも、何とかやってる」

「そうか、あんまり家にいてやれなくてすまんな」

「大丈夫よ。実家を離れて通ってる子なんて、たくさんいるわ。同じことよ」

「そうか、ならいいんだが。そう言えば、彼氏ができたって言ってたな」

「随分前からよ。とっても素敵な人。名前は、垣元 康太君って言うの」

「そうか、一度パパも逢ってみたいな。今度紹介してくれよな」

「うん、もちろん、いつかきっとね」

父と楽しくおしゃべりしていると、時間が経つのも早い。

「あら、もうこんな時間。私お風呂に入って、もう、寝るわ」

「ああ、お休み」

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