仮想現実
第6章 。。。。。。
ひんやりと冷たい土が剥き出しの床。その上に寝具と言うには程遠い程の薄い布切れ。更にその上には一人の幼子が横たわる。その手足は異常な程に痩せ細り、それとはアンバランスに腹部だけが膨れて見えた。
その幼子は不治の病を抱えているようだった。勿論、貧困に飢える民の多いこの国で、その病名を特定する事は困難だった。しかし、日を追うごとに衰退していくその肉体と両親の手伝いを難なくこなす兄弟の姿に、自分は皆とは違う、という事に幼子自身も気付いていたようだ。
逆らえきれない運命に、幼子は一人、涙を溢す。そして私は、それに気がつかない振りをして目を伏せた。
幼子が願う事はただ一つ。次に生を授かった時には健康な器を‥‥。
それだけを願い、幼子は終焉前の不規則で不確かな呼吸を繰り返す。その傍では母親が還ってくる事を信じ、涙を流しその名を幾度となく叫び続けているようだが、この状態の幼子に応える力は残っているのだろうか?
ーーーそして幼子の意識は生まれる前の状態へと還った。
しかし幼子の意識が再び目覚める事は、ない‥‥。