仮想現実
第2章 。。
其処は草木が鬱蒼と茂る場所。
辺りには何もなく、あるとすれば蔦がその建物全体を飲み込んでしまった廃虚のみ。蔦の隙間からかろうじて姿を見せるステンドグラスが、それが過去、礼拝堂か何かの施設だった事を知らせてくれる。時折、響き渡る耳障りな野鳥の鳴き声が、その建物の存在を際立たせていた。
中を覗くと、人影が見えた。
人影は、一見、 色、形、どれをとっても混じり合わないようもとれたが、其々が似たような顔つきでほくそ笑み特有の言語で談笑を繰り返している。
そして、その人影の中心には長老らしき白髪の男性。
談笑する人影を一度、大きく見渡すと、憂いを含んだ目を硬く閉じる。
鼻をつくこの臭いは、ガソリンだろうか?
が、その異臭を気にする者などこの中には誰もいない。ただ、時間の経過と共に湧き上がる人影の歓声に、宴の時が刻一刻と近づいているという事だけはわかった。
と、次の瞬間、長老は手にしていた蝋燭に火を灯すと、其れを天高く掲げる。何か言葉を発したかと思うと、蝋燭は長老の手元から滑り落ちた。
歓喜の声が哀悲の声へと変わる瞬間。熱さから逃れようと、逃げ惑う人々。が、出口は幾つもの厚い板で覆われていた。
ーーーどれくらい、時が過ぎたのだろうか。
其処から人影の音は、もう何も聞こえない。