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僕が僕を殺した理由

第2章 。

 

結局、僕が店を出たのは、閉店時間の午前二時を大幅に過ぎてからだった。


アルコール摂取量に比べて酔いはあまり回らず、やけに頭だけが冴えていた。そのためか、布団に潜り込んだところで睡魔が訪れる気配はない。それに時間を持て余した僕は、そうする事を諦めたかのようにベッドから身を起こすと、手放す事の出来ない煙草に火を点けた。


何もない空間に時計の秒針の音だけが冷たく響き渡り、いっそう僕に虚しさを感じさせる。それを紛らわすために、煙草の煙を気管の末端に存在する肺胞一つ一つに浸透させるよう、深く躯に取り入れた。


そして、そうする事を惜しむようにゆっくりと煙を吐き出しては、薄暗い部屋の中で影を作るテーブルの上に置かれたままのノート型パソコンを、僕の目が捉え続けていた。


ーーーそれは多分、僕の意思とは違う。そこから放たれる甘美な刺激が、僕の理性とは別の場所に作用していたのだと思う。


次の瞬間、僕は煙草を揉み消すと、何かに取り憑かれたかのように、重たい躯を引きずりながらパソコンの前へと向かう。そしてパソコンを起動させると、躊躇う事なくネットに接続した。


烏揚羽のホームページへと跳ぶと、青緑色の羽を持つカラスアゲハが静かに僕を歓迎していた。ノラは今夜も来ているようでチャットへの参加を示しているが、ノラ本人からの最初のメッセージは見当たらない。僕はノラの視線を意識しながら、キーボードを叩き始めた。


 
朔>発狂シソウダ。誰カ早ク、僕ニ薬ヲクレ。



それだけ打ち込むと僕はパソコンの前を離れ、冷蔵庫の中から缶ビールを一缶取り出しソファーに腰を下ろした。ほどよく冷えたビールは僕の体温を奪い、感覚を麻痺させる。灰皿の中でいぶる煙草の存在も忘れ、僕は次の煙草に火を点けた。


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