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秘密中毒

第12章 告白



あの人はこっちを振り向いて、言った。

「どうしてだろう、君には…言いたくなかった。

怖かった、のかな。

黙っていてもいつも通りの日常が続くならって。

あいまいなままで、君に甘えていたかったんだと思う…」

少し悲しそうな目をして。
少しあたしから目をそらして。

あの人はいつもそうだった。
言えないことがあるから、あたしにも踏み込んでくれなかったんだ。


「いつも通りの日常なんて、とっくに…
壊れてたのにね……。」

そうつぶやいたあたしの言葉は、半分は自分に向けられていた。

あたしたちは何を守ろうとしていたの?

ただ、いつも通りに。
日常を失うことを恐れて。
目の前の相手を、見失ったままで。



ガチャリ。

あたしはあの人の横を走り抜けて、玄関から外へ飛び出した。


今、一緒の部屋にいたくない。

とにかく離れたい。



あの人は追ってこない。きっとあたしから目をそらしているだけ。


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