
秘密中毒
第14章 最後日
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知らない間に寝てたみたい。
山田くんの端正な顔が、
すぐそばで寝息をたてている。
(ちょっと前にもあったな、こんな場面…)
つい最近のことなのに、懐かしく思い出しながら、今度こそ起こさないようにベッドを出る。
「勝手に失礼~」
台所を借りることにする。
山田くんが作ってくれた料理に比べたら絶対にへたっぴだけれど。
冷蔵庫にあるもので、味噌汁と卵焼きができた。炊飯器にあったご飯でおにぎりも作る。
物音のせいか、山田くんが起きてくる。
「すげーいい匂い」
「あるもので勝手にお昼作っちゃった。ごめんね。」
「俺が作るのに。あんだけセックスしたら、腹減って待ちきれなかった?」
「え? ちがっ…あたしはただ、いつも作ってくれてるから…」
ぐうううう。きゅるっ。
「……」
ああもうどうして、このタイミングで派手な音を出すかな、あたしのお腹。
山田くんは肩を揺らして笑いながら、リビングのローテーブルの上のモノをどける。
「あーおもしれー。あやとりといると退屈しねーな。」
いやいや。
あたし、そういうキャラじゃないはず。
けっこう大人だし、わりと器用だし。
なぜか山田くんの前ではすごい偶然が重なるだけで。
黙々と食べる山田くんを90度の角度から眺める。
見た目がこんなにステキじゃなくたって、十分好きでいられるのになぁ。と変な恨みごとが頭をよぎる。
あのデートの相手も、この部屋の散らかりようを知ってるんだろうか。
でも今は、あたしとの時間。あたしにはそれで十分すぎる。
そうだ、さっき名前を呼んでくれた。あだ名じゃなくて。
その前に、なんて言ってたんだっけ?
