秘密中毒
第3章 慰め
あたしは迷いながらも、たんすの奥から小さな箱を取り出す。
若いころの彼氏に一度だけ使われた「道具」。
小さなローターだった。
それは彼氏の手であたしの秘部の敏感な突起の近くに当てられ、
アッと言う間にあたしを絶頂に押し上げた。
彼は「機械に負けた」と言って、二度とそれを使わなかった。
そしてあたしは、眠れない夜にそれを使うようになったんだ。
卓也さんとするよりも大きい罪悪感と羞恥を感じながら、
あたしはスイッチを入れてしまう。
昼間どんなに卓也さんに優しく舐められても
イカなかったあたしの突起は
ごく弱い振動に反応し、身体ごとビクン!と震える。
「―――っ!」
声にならない息づかいを、最小限に抑える。
徐々に下半身がこわばり、腰が持ち上がる。
何かが急激に身体中を支配して…
そして爆発が起こる。
「んっ……!!」
身体が何度も跳ねたあと、
何かから解放されたように脱力する。
鋭い快感が駆け抜けた後には、
甘い余韻があるにもかかわらず
冴え冴えとした理性が戻ってくる。
(また…しちゃった……)
気がつけば汗をかいていた。
あたしは誰かにのぞかれているような恥ずかしさを感じて
急いでローターをきれいにして元の場所にしまう。
男の人がイクのって、こういう感じなのかな。
なんて考える。
だってセックスしてる時と全然違う。
たとえイカなくても、あたしには相手のあるセックスのほうがずっと気持ちよくて。
ずっと幸せを感じる。
だけど余韻も大きくて、モヤモヤするんだ。
そして一人のコレで、モヤモヤを消している。
…………
あの人に抱いてもらえないあたし。
セックスでイケないあたし。
その時のあたしには、
卓也さんに抱かれることとローターでイクこと
ふたつの慰めが、必要だった。
でないと、他の何か大切なものを壊してしまう気がした。
それが何なのか、自分でもはっきりと考えたことはなかったけれど――――――