秘密中毒
第4章 異変
…………
やっぱりおかしい。
翌日は仕事が休みの土曜日。
土曜はいつも仕事のあの人が出かけてから、
あたしはトイレに駆け込んだ。
喉も頭も昨日と同じように痛い。
そして昨日と違うこと。
ショーツを下げて確認する。
何かドロリとした感じの粘液が見える。
いわゆる「オリモノ」はいつもあるけれど。
ちょっと多いみたい?
それに。
「か、痒い…なにこれ~?」
初めての経験に、あたしは怯えていた。
性器の入り口から中ほどにかけて、チクチクと痒みが走る。
(もしかして、性病…………とか)
必ずコンドームしてたのに?
(………とにかく確かめなきゃ。)
タウンページを取り出し、病院のページを開く。
ふと、あたしの手が止まる。
「そっか。産婦人科、なんだよね。」
妊婦さんや赤ちゃんが当然のようにいるところ。
街で見かけるだけでも苦い感情が溢れて来るというのに、
待ち合い室でそんな人達に囲まれて過ごすなんて。
「うん…ヤだ。」
それに下手に近所の産婦人科に出入りして
顔見知りに会えば、「おめでた?」なんて聞かれるのが関の山だ。
結婚さえしてれば子どもができると信じて疑わない罪のない人々は、
何の悪気もなくあたしの神経を逆撫でしてゆく。
しかも今回は、あの人に知られたくない。
性病だったら…浮気してますって宣言してるも同然だもの。
薬局で痒み止めを買って済まそうか。
あたしの頭が病院を回避する手だてを探し始めたとき。
あたしの目が、信じられない文字を捉えた。
『午後は往診』
――――産婦人科、内科。
「これだっ!土曜日もやってる!」
あたしは迷わず携帯を手に取っていた。